東京都 みち様

もう、随分昔の話なのですが
私達がまだ幼い頃、病気で母を亡くし
その後は、父が男手ひとつで
5歳の私と3歳の弟を必死で育ててくれました。
昔気質の、無口で厳しい父でしたので
弱音をはいたり、愚痴を聞いた事などはなく
ましてテレビや小説の中のような
ドラマティックなエピソードなどはありませんが
今思うと、当時の父は仕事と家庭の両立で
本当に大変な事だったと感謝しています。

父が定年を迎えた年の誕生日くらいは
何かお礼をしようと姉弟で話し合い
少し豪華な食事と花束を贈る事にしました。
ぶっきらぼうな弟が無言で渡した赤いバラの花束を
これまた「うん」と一言だけで受け取る父。
その後は黙々と食事
その花束の中には
「おつかれさん。ありがとう」と
弟のきったない字で書かれたメッセージカードが入っていましたが
父が中を見る様子もなく
花束は椅子に置かれてしまったので
弟もそそくさと自分の部屋に入ってしまい
少しは感動を期待した私は
なんだかとっても拍子ぬけした事を覚えています。笑
その後、数年が経ち
父も病気で倒れ、亡くなってしまいました。
ある日、父の部屋の片付けをしてると
きれな菓子箱から
どっさりの写真が出てきました。
その中にはたくさんのバラの花束の写真が!
父はあの日の花束を
いろいろな写真として残していました。
とっくりに活けた写真もありました。
皿に浮かべたものまでありました。
お花が短くなってもずっと飾っていたようでした。
弟のメッセージカードのアップもありました。
裏にはあの日の日付と
[ありがとう]の言葉が書かれていました。
止めどなく涙が溢れて
子供のように号泣したのを覚えています。
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カテゴリ: 泣ける話
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